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2018年11月27日 (火)

再選に黄信号がともった蔡総統

松田康博・東京大学東洋文化研究所教授

蔡英文・民主進歩党(民進党)政権の惨敗である。1124日に行われた台湾の地方選挙は、民進党にとって、4年前に中国国民党(国民党)が惨敗した選挙を鏡で映したような負けっぷりであった。

最も重要な6直轄市で、民進党が与党だった4市のうち、民進党は高雄と台中を落とした。全体として首長ポストが13県・市から6県・市へと半減したのである。総得票率も40%を割り、「完敗」といえる。

民進党敗北の原因は、何よりも蔡英文政権の政権運営に原因がある。2016年1月の大勝利は、馬英九・国民党政権への不満や反対を糾合したコアリション(連合)形成に成功したためであった。今回はこのコアリションが崩壊した。

蔡英文は、再選を危険にさらし、きまじめに改革に取り組み、年金改革、労働基本法改正、脱原発、転換期の正義(国民党の「不当」財産没収等)など、痛みを伴う改革を行った。しかし、改革される側は強く抵抗し、改革を支持する側は遅さや妥協に不満をためた。

しかもせっかく成立した民進党政権なのに、中国との関係は「現状維持」だったことから、台湾独立派からもそっぽを向かれた。これらの状況は、蔡英文の堅実さを表しているが、台湾の有権者はせっかちである。不満はどんどん膨らみ、行政院長を独立派の頼清徳に替えたくらいでは収まらなかった。

他方国民党で注目すべきは、韓国瑜(国民党)への支持が爆発的に広がった「韓国瑜現象」である。韓は民進党の金城湯池である高雄市の市長選挙に徒手空拳で挑んで喝采を浴びた。民進党批判の「空気」をうまくつかんだこの現象は、中部の県・市にも拡がり、民進党への票を大量に減らした。

惨敗により、蔡英文の再選には黄色信号がともった。党主席を辞任した後、党内から批判にさらされ、今後は独立派に妥協した人事や政策をとらざるを得なくなるであろう。このことが、中国との関係にどのような影響をもたらすか、注目される。

ただ、両党とも、2020年の総統候補を決めるまでに数カ月までの時間しかない。大勝利した国民党は、党主席の呉敦義が候補になることを阻止しにくい。呉は国民党の主要政治家の中で、最も高齢で人気がない。しかし、勝利の勢いに乗り、国民党内では、人気のない蔡が相手なら呉でも勝機があると見なされる可能性が高い。

他方、蔡英文は党主席を辞任して責任をとり、一番人気の頼院長の辞任は認めなかった(=辞任後、蔡のライバルになる可能性を摘んだ)。民進党と支持者が重複しているため、総統選挙に出馬すれば蔡英文を落選に追い込める柯文哲台北市長も、今回は3,000票あまりの僅差の勝利にとどまり、出馬の勢いを削がれた。民進党内もまた、人気のない呉が相手なら勝機があるとして、現職の蔡が再選に臨む可能性が高い。

本稿はThe Daily NNA台湾版』第04698号(2018年11月26日)に寄稿した評論である。本ブログに転載を許可していただいた編集部に御礼を申し上げる。

 

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